コルテス率いるわずか300の騎兵に蹂躙(じゅうりん)され、国家は滅亡したという歴史的事実もあるので、強力な軍隊は平和な時代といえども常に保持、研究しなければならないというのが人類の総意である。当時、知識人のひとりのモンテーニュが「エセー」に、このスペイン人の残虐を批判しているが、財宝に目がくらんだ連中に何を言っても無駄というもの。同じ事が、人類全体の平和にも言えよう。と、ヒデキ中尉も考えている。

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 話を元に戻すと、母船には必ず戦艦3隻が防衛についているはずだが、劣勢の報に、当然、戦場に向かったがそのまま音沙汰(おとさた)なし。母船は丸裸で小型戦闘機Ψ(プシー)210(通称、ゼロ戦)数10機、ミニ戦闘機Ω(オーメガ)1088(通称マイカー)が1000余機舞っているだけだ。戦闘は終了したとはいえ、まだ数時間しか経過していないため、戦闘隊形を解くわけにはいかないだろう。

 武器の積み込みに3時間を要し、ただちに出撃。と行きたいところだが、第1と第4操縦室の被害状況が会議後に知らされ、母船では修理不能と知らされた。しかし、母船の防衛が小型戦闘機とミニカーのみでは母船の戦闘員2万余の人たちは不安どころではなかっただろう。どちらも、ロボットによる操縦で、ミニカーに至っては、人型ロボットすらなく、早い話が径2m、長さ6mのミサイルが飛んでいるのであって、しかも母船から離れたところで守備についているので、乗組員にはほとんど見えない。

 とにかく、母船防衛に傷ついたとはいえ、我々1機でも飛行しておれば、いないよりましかもという気持ちで付近を警戒した。敵は退散したとはいえ、いつどうなるかは戦場の常だからね。

というわけで、今回の大戦は一応終了となったのだ。では、敵の7隻の母艦はどうなったかって?それがどの戦線でも圧倒的勝利をしていたのに、ヤマト弾を食らった母船が何を報告したのかわかる由もないが、とにかく全部隊が突如退却したのだ。

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 先のオバサン猿人(えんじん)(人と言える姿ではなく、巨大なゴリラに顔が先ほど述べた牙のないサーベルタイガーを想像してもらうと、少しは伝わるかも)との大戦で唯一、勝利した我々の戦闘機の戦闘員5人は全員特進し、中尉の私がなんと5階級特進して、准将、つまり将軍になった。他の乗組員も全員3階級特進して、全員が戦闘機の機長になれる資格を得たが副機長のゴメス准尉は大尉となり、機長になれるのに、あくまで私についていきたいということなので、仕方なく採用しているが、本当はひとりだちして機長になってもらいたいのだ。

 他の3人も同じ戦艦の所属戦闘機を希望し、認められた。将軍が1戦闘機乗りというのは世界に例がないので技術准将ということでムリヤリ認めてもらっている。そうしないと、私は退役するといったら、アンドロメダ防衛軍の参謀本部もしぶしぶ黙認というかたちになった。

 アンドロメダ銀河内で人口が50万人を超える惑星はトリトンのみだが、地球の月に相当する衛星が2つあり、そのうちの一つが軍需産業に特化している。あとは5万人弱

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