ている。

 その有様を5機の戦闘機は岩場の陰で見ていたが、生きた心地はなかった。オバサン軍団は痛くも痒くもなかったかのように、悠然(ゆうぜん)と直進を続けたが、母艦の1隻が離脱してこちらに向かってきた。大成功だ。これが全軍がむかってきたら、とてもじゃないが勝負にならない。攻撃態勢のためキラキラボールはゆっくり回転しているが、速度は光速以下どころか、宇宙では静止状態と言ってもよい秒速数100kmになっている。

 それにいつの間にか()き出されたか恐怖のアメーバ戦闘機というか戦艦というか、要はアメーバを2000機ほど従えている。アメーバは母艦を守るように、かなり前方に位置しこちらの目に届くほどの距離なったので、我々から80キロほど離れて岩陰(いわかげ)にいたゼロ戦、ミニカーが一斉に出撃。アメーバがそちらに目をとられている一瞬を狙って、ヒデキ准将以下、5機の戦闘機がまだスクリーンで点にしか見えないキラキラボールに向かって、総数3万発、3万種のまだら弾を全弾砲撃。5秒そこそこで打ち終え、准将得意の戦線離脱、今回は5機の一斉反転だ。

 オバサン猿人側としたら小惑星というか巨大岩石の陰から、ひょいと半身をのぞかせて、攻撃してきたので、巨大な岩から打たれた印象だったに違いない。母艦からはこちらの戦闘機は見えないはずだし、たとえ真空砲を発射しても岩に巨大な穴が開くだけで、さしたる効果はない。

 小型戦闘機の攻撃を受けたアメーバはバラバラになったり、元に戻ったりしているが、ある大きさになるとミニカーが突っ込んで2メガトンの核爆発をするので、回復に手まどっていた。そうこうしているうちに、後続の700機ほどの仲間のアメーバが来て、ゼロ戦とミニカーはあえなく全滅。

 しかし小型戦闘機ゼロ戦、ミニ戦闘機ミニカーと交戦していたアメーバ軍のほとんどがこちらへ転身し追いかけてくる頃には「ゆきかぜ」ら5機は相当な距離を(かせ)いでいた。なぜか母艦に動きはないようだ。奇妙な爆弾で面食らったか、本隊を離れたので、深追いを避けたのかどうかは知る由もない。

 そのうちアメーバの1機が超望遠鏡の視界に入って来た。例のチカチカ真空砲をやっている。超高速で逃げているため何ともないようだが、後部格納庫5%損傷の報が入り、「こりゃ、ちとまずい!」と准将つぶやくと同時に、「ミニカー500発進!」の命を下す。ズズン!と軽い衝撃が走り、およそ500機のミニカーがアメーバめがけて突進。

 味方の戦闘機4機もほぼ同時にミニカーを発進したようだ。それまでほぼ直進で編隊を組んでいたが、数百機とみられるアメーバがスクリーンで見え始めると、「5角編隊、距離20、煙幕開始!」の報を他の4機に知らせる。お互いの距離を30kmにして、正5角形に散らばって、透明な煙幕を張り、全体で径80km、長さ5000kmの広大な大気層を作る作戦だ。「それじゃ、気化器作動」と言うと同時に、ゴメス副機長が他の4機に「気化器作動!」の命を下す。すぐさま、副機長を残して、機長以下3人の操縦士と8体の操縦補佐のロボットは席を立ち、急いで特注の無音瞬間気化器「ハックション」のある作業場に向かう

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