現場では100台を超える気化器には各々20体ほどのロボットがドンドン山積みしてある、あらゆるガラクタを径10mほどの穴に放り込んでいる。メインはベルトコンベアから流されるがらくただが、さらにロボットがいろいろな廃棄物を投げ入れる算段だ。この作業場は室温が0度と低いので、たいていの人が「ハックション」をするのでこの名がついたそうだ。無音気化器というだけあって、コトコト、コトコトと小さな音と振動があるだけで、戦争でなければクラシック音楽のバックミュージックを流しても、十分鑑賞できるだろう。

 戦闘機5機で出撃した大きな理由の1つはこの煙幕(えんまく)を広範囲に張る事にあったといえる。5機がフォーメーションを描きながら、いわば、径80km、長さ5000kmの容器を考えてもらうと良い。その中に、たっぷりのガスをばらまき突進してくるアメーバをいわば大気圏突入させて、消滅させる作戦だ。ガスはすぐには真空中で拡散消失しないように、超微粒子のガス固定剤も同時に含んでいるため、少なくとも、数時間はガス状態を保持する。突進してきたアメ−バはガスに突っ込み、自らもガスの仲間入りとなるので、すぐ10倍、100倍の範囲が墓場となるわけだ。

 と、ここまではほぼ演習どおりにいっていたのだが、まだ半分もガス化がすんでない頃、コンスタブル大尉指揮下の戦闘機にトラブルが起こり、気化器がほとんど使えなくなったという連絡が入ると、作業を止めて、5000kmほど先で、アメーバの迎撃(げいげき)態勢に入れと命令。コンスタブル機はスピードを急に上げ、視界から消える。

 大気の原料が大幅に減ってまずいなと思っていると、「機長、来て下さい!」との報にかけつけると、5つほど隣の気化器で作業していた金髪美人のクララ嬢が手持無沙汰で待っている。投げいれるものがなくなったのだ。一部のロボットは自ら粉砕機の中に飛び込んでいる有様。すぐさまそれを止めさせ、「ベルトコンベアを投げ入れろ!」と大声で叫ぶ。

 こうなると作業ロボットの本領が発揮される。力だけが取り柄のような5m近いゴツイロボットがメリメリとベルトコンベアをぶっ壊すものだから、この時ばかりは作業場もすごい音響が鳴り響いた。他のラインも一斉に見習い始めたため、すごいシンフォニーとなり、クラシックが聴けるほどの作業場は一変して雷神達の酒盛りではないかという場となり、コンベアも尽きかけたかという段になると、ヒデキ機長何を思ったか、制服を脱ぎ始め、それを気化器に放り込み、あっという間にスッポンポンになったしまった。驚いたのは、クララ准尉(じゅんい)(本来ならハンマーシュミットというべきだろうが、かわいいのでみんなクララと言っている)。淡い恋心を抱いていた機長があられもない姿になったのを見て、動転したのか、反射的に、ドミニクの名画「泉」のモデルと同じ姿になろうとするものだから、「いや、准尉お前はやめなさい。」と止めるのを聞かず、これまた、うまれたまんまの姿になってしまった。

 19世紀の小説「名探偵シャーロックホームズ」シリーズにアイリーン・アドラーなる女性が登場するが、ホームズは彼女を「彼女は男が命をかけるような、美しい美貌をもつ愛らしい女だった。」と表現しているが、まさにその表現がそのまま当てはまる光景で、一糸まとわぬ姿になる事でさらに美しさに磨きがかかったようだった。いつもは沈着冷静の准

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