いることまでわかった。シールドと白金色の本体とは別々の回転をしているのだ。シールドは固定されているのではなく、また、本体と同一に回転しているのではないことも判明した。

 ふしぎなことに100%のエタノールやメタノールには何の効果もなかったが、あの頑強(がんきょう)そのものの敵母船が焼酎(しょうちゅう)やウォッカのようなアルコールに弱いといううそみたいな事実もわかったことは大きい収穫だった。もうひとつの成果はあのうるさいアメーバは大気に弱いことも実戦で確かめられた。交戦中はほぼ秒速10100kmの速度で移動するので、付近に広大な大気圏ができれば、それだけアメーバは行動がにぶくなるはずだ。

 24世紀に発明された新金属というか柔らかく、手でちぎれる新合金ネトロンとウラル地方のコールタールを混ぜた粘着弾(ひっつきモンチッチからとったモンチッチというあだ名が付けられたのだが、それは後日の事だ)が、バラバラになったアメーバの再生を大きく阻止できることがわかったのも、3万種のまだら弾の一部が母船の防衛をしていたアメーバにぶち当たり、再生に手間取る様子が克明に記録されていたからだ。この3万種もでたらめに採用したのではなく、各分野の専門家が合議のうえ、選出したものなのである。

 そんなこんなでまだまだ陽動作戦の映像記録から判明した有益な情報は多々あるが、このあたりで止めておこう。

 そこで、地球およびトリトンの関連の全工場、研究所が24時間体制でネトロン、ウラル産コールタールを製造、それに42%の芋焼酎(じょうちゅう)、96%のウォッカの分析にかかり、その微量分析の結果から数100種の成分の製造に着手したのである。もちろん、芋焼酎とウォッカの寸分たがわぬ合成酒を造るためだ。20世紀の化学では芋焼酎の微量分析はそれだけでも数か月を要するが、38世紀では瞬時に分析でき、さらに微量成分も作れるので後は混ぜるだけだ。

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しかし、珍奇(ちんき)ともいえるこの作戦には疑問を持つ者も多く、正攻法で戦いたいとする将軍は9割を超えた。連合国、主要国の元帥(げんすい)16名が集められ、大まかな方針が()られた。

元帥会議ではヒデキ少将(前の陽動作戦の功績で昇進、本当は中将を付与されたが、本人の希望で技術少将だ)の提案をどの程度採用するかの一点に絞られ、アンドロメダ銀河にあるバイアス小惑星帯に敵を誘い込んで戦うという案は賛成したものの、武器に関して長距離用Π(ピー)レーザー20MB、中距離用プロトン・レーザー、短距離用パルス・レーザーを主装備とし、予備として各戦艦に1万発、各戦闘機に1000発のヤマト(てっ)甲弾(こうだん)を積み込んだ。

少将の作戦では戦艦には少なくとも20万発、戦闘機には2万発積んで欲しかったが、何しろ生産が間に合わない。会議では作戦本部をトリトンに起き、全軍をトリトン付近に集結させておいて、主力はあらかじめバイアス小惑星帯に置き、オバサン軍の動きに合わせて戦場に移動ということに決定。

全軍とは言うまでもなくアンドロメダと天の川の連合軍のことで、実際は地球とトリトンの連合軍といってもいい。他の惑星はまだまだ開発途上なのでとても軍事産業はないに

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