いだに敵母艦36隻が、なんとわずか9隻に減り、その代わり直径が50kmを超えるのではないかと思える、それこそ小惑星といってもいいぐらいの巨大母艦に変身し、みるだに恐ろしい超巨大ギラギラボールになったのである。色彩も金白色から気味の悪いことこの上ない人類が出合ったことのない、死の世界を思わせる濃い暗紫色でしかも、内側が暗い赤色で光っている何と形容してよいかわからない、要は人類を恐怖におとしいれる光とでも言えばいいのか。

 偵察衛星の情報では、突如、母艦4隻が見る間に合体している光景が良く捉えられているが、途中ですべての映像が切れてしまった。キラキラボール周辺物体はすべて破壊されたらしい。その後の、映像ではバラバラだった母艦が各辺約700kmほどの正立方体に編隊を組み、真ん中に旗艦らしい母艦を中心として進撃するさまはなんと表現すればよいか。

 要はサイコロの中心に核があり、その各角(かくかど)に母艦が位置する編成だ。正面から見ると恐怖の六角形が迫ってくる感じだ。この編成がどのような意味を持つのかは知る由もない。

 これではいままでの情報はすべて無駄になりかねないので、作戦本部に緊張が走った。早い話が、超巨大正方形のシールドがどの程度のものか見当もつかないし、さらに径50kmの本体のシールドの強度もさっぱり未知のものなのだ

 前哨(ぜんしょう)戦として、急遽、戦艦12隻、戦闘機約100機が特攻的な役割を(にな)い出撃。径30kmほどのいびつな巨大岩石やその他の大岩石の陰に隠れて、まだ、レーダーでしか見えない3000万kmかなたの先頭を走る母艦に向けて、各種レーザー砲を一斉砲撃。また、他の大小の岩石の陰から戦闘機も戦艦に合わせて主砲の長距離Π(ピー)レーザー60門で参加。総計300門の各種レーザー砲を径300mの範囲に集中させた。

 しかしアメーバの立方体形の母船9隻は直進。逆に他の8隻から真空砲を受けると、初めの30秒ほどは巨大岩石のおかげで何とか持ちこたえていたが、すぐに穴だらけになり次いで粉々になった。もちろん全艦隊、戦闘機も一か所攻撃を守りながら、応戦したが岩石の(たて)がなくなって、次々に穴だらけになり戦闘不能になっていく。こちらの砲門がすべて沈黙するのに3分とかからなかった。比較的遠距離なので敵はまだ戦艦のアメーバを配置していなかったが、オバサン軍は味方の戦艦なしでも十分戦えることを証明した。

こちらの戦艦はバラバラにはならなかったものの、こちらの砲撃が完全に止むと、穴だらけの戦艦12隻はやがて12本の紫の透明な光を浴びて、一瞬のうちに消えてしまった。

 正攻法を強力に主張してきて、今回の総指揮を()ったマルテランジュ大将以下約29000名の将兵は露と消えたのだ。これらはすべて偵察衛星の映像や戦艦と戦闘機からの報告によるものだが、すべてが途中でプツンと消えているのは閃光をあびたからだろう。全軍激突わずか3日前のことだ。正攻法はまったく意味をなさないことが、はっきりわかったときの作戦総本部の並みいる将軍は人類の滅亡を実感したにちがいない。正攻法で戦うと主張していた将軍たちもこの事実に身の毛がよだち、ヒデキ少将の実戦で実績のある奇策に人類の命運がかかることになった。

 話が3カ月前に戻るが、アメーバ軍がアンドロメダに進軍しているらしいとの情報が入

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