7番母艦のさらに最後部めがけて、アルコール弾を浴びせ、外側のシールド破壊を(ねら)う作戦だ。もともとシールドは相当のエネルギーを食うところに持ってきて、各辺700kmの立法体の超巨大シールドともなると、少将の言う通り、そんなに強力なシールドではないとみたほうがいい。

 しかし、失敗は許されないので、300%の成功を目ざして、少将は予備軍をもらい、3倍の軍勢を指揮下に入れ、外側後部シールドの破壊と同時に敵母艦第7軍の内側シールドの破壊を担当した。ここに至って、決死の覚悟を示すために、第7軍の司令官ナラダッタ大将の許可を得て、ヒデキ少将所属の戦艦5隻にZ旗をかかげることにした。 

Z旗とは「皇国の興廃(こうはい)この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ。」の意味があるのだが、ナラダッタ大将はネルソン提督の名文句「各員がその義務を尽くすことを期待する。」を頭に浮かべOKを出したのだろうが、ヒデキ少将の思いは少々違っていたようだ。

人類にとって、幸いだったのは、オバサン軍がバイアス小惑星帯に突っ込んでくれたことだ。中心部からかなりはずれたとはいえ、それでもその他の地を戦場とするよりもはるかに防御となる岩石が多いのだ。その大小様々の岩石を蹴散(けち)らしながら、1辺約700kmの巨大立方体隊形の内側に4〜5万機の戦艦アメーバをしたがえ、トリトンに向かう姿は、鉄壁の守りを誇示し、人類に戦う意欲を失わせるに十分のものだった。

 速度はせいぜい秒速200kmのノロノロしたものだ。先頭の敵第1母艦がバイアスに入り、引き続き最後部の第7母艦が入って10秒もしない時、少将の第1声が冷たく1番槍の部隊に響いた。

1番槍部隊、アルコール弾、敵第7母艦28地点に向け、全弾発射!」の声が終わるか終らないうちに、1番槍の戦艦、戦闘機の全砲門が敵第7母艦の後部中心部に向かって開いた。すさまじい轟音(ごうおん)が10秒ほど響く。(かん)(ぱつ)をいれず、「1番槍部隊、ヤマト弾、敵第7母艦28地点に向け、全弾発射!」とこれまた冷たく響く。今度は旧式のアナログの爆弾だったので、ものすごい轟音でからだが震える。総数120の砲塔から50万発のヤマト(てっ)(こう)弾がアルコールで弱体化したしたであろう外側シールドで40万発ほどが消費されるがものの10秒ほどで突破、その勢いで、80万発のヤマト弾が第7母艦のシールドへほとんど同時に到達。ここで推定30万発弱のヤマト弾300万メガトンの核爆弾がさく裂、さしもの強力シールドもあえなく崩壊、あっという間に息つく暇もなく、推定10万発のヤマト(てっ)(こう)弾100万メガトンが母船内に突入、さく裂したものだから、敵の第7母艦は応戦する暇もなく回転を停止、すかさずゴメス大将指揮下の第7軍の母船、戦艦、戦闘機が全砲塔から放たれたヤマト弾でさしもの直径50kmの巨大ギラギラボール母艦は大爆発、不気味な暗紫色の美しい花火となって、立法体隊形の一角はわずか30秒足らずで、崩れた。第7軍の出番はあまりなかったといえる。

 約束の10秒が経過し、味方の各軍団の1番槍部隊は、各々、敵母艦めがけてアルコール弾を集中砲撃、ヒデキ少将の部隊と第7軍の活躍(かつやく)で外側シールドは弱体化していたため、各部隊はアルコール弾で弱体化するまでもなかったが、その時はわかるはずがなく、作戦

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