花火ぐらいしか考えてなかったのだろう。向こうがチカチカと真空砲を2発しか打たなかったのも、お手並み拝見というご挨拶だったのだ。まったく、見ていて冷汗がでたのは、他の4人の仲間も同じだったろう。これは運としか言いようがない。

 敵の母艦本体に遭遇した映像は我々の写ったもの以外はただ1件のみ。それは、偵察衛星からではなく、戦艦から直接送られてきた映像で、約5000km先の豆粒ほどにしか見えないキラキラボールへ主砲のイオ・ドーナッツ弾を30発ほど連続発射したところ、敵が一瞬輝いたので、仕留めたとスクリーンを見ていた人は思ったらしい。しかし、それはシールドにはね返された反射光だったのだ。それから、あらゆる方向にゆっくりと回転しながら突き進んで来るキラキラボールが一瞬止まった瞬間、人類が見たことのないような、輝く暗黒紫色の不気味な閃光が・・・・・。と、ここで映像が切れていた。戦闘機も周りに4050機いたはずだが、このとき同時にやられたのだろう。

 もしこのように、戦艦(長さ約1km、幅約700m、厚さ約300m)を一瞬に消し去る、真空砲(想像もつかないので仮の名だ)が存在するのなら、戦争にならないのでは。日本には昔からポックリ死ぬことができるように、わざわざお宮参りをしている人がいるそうだが、連合軍の戦艦の乗組員になれば、100%希望がかなえられるというものだ。

 このような戦況が映像でわかるにつれ、地球とトリトンの全軍の大本営ならぬ参謀本部会議は10分ほど静まり返り、物音ひとつしない不気味な雰囲気となった。

 

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 大戦後の戦場調査で、奇妙な現象が、トルコ隊の調査船からもたらされた。なんどもいうようだがトルコ隊といっても乗組員のせいぜい2割ほどが、トルコ系と言うだけであって、他の乗組員の人種構成はごった煮で書くのも面倒という具合だ。しかもそのトルコ系というのも本人だけが自覚しているだけで、さまざまな人種のこれまたごった煮である。

 戦場から0.3光年離れた径20kmほどの小惑星、というか大きな岩石に径3km弱、深さ2kmほどの円柱状の巨大な穴を見つけたというのだ。その穴の切り口から、例の敵母船キラキラボールの閃光を浴びた証跡(しょうせき)ではないかというのである。

 この情報は人類にとって、非常に貴重なもので、とにかくキラキラボールの主砲の性能の一端(いったん)がわかったことになった。

 軍事専門家でなくとも、すぐ気付くと思うが、オバサン猿人の軍を小惑星帯に誘い込んで、大岩石を楯に戦えば、ひょっとして勝てるのではということだ。アンドロメダ銀河にはそれこそ無数の小惑星帯というか岩石群があるので、実践的なこの戦法はトップシークレットとなった。

 それから3年は何事もなく経過したが、その間人類は母船、戦艦をはじめヤマト弾の製造等に励んだが、ヒデキ准将は大いに疑問を持った。同じ過ちを人類をはるかに上回ると  言われる脳を持つオバサン猿人が(おか)すとはとても思えなかったからである。絶対に対策を

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